前回5次収差の具体的な分布を取り上げました. 今回は応用としてダブルガウスの特徴的な収差を解析したいと思います.
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今回用意したサンプル設計は以下の通りです. 適当に用意しました.

レンズ図とスポットダイアグラムは以下の通りになります. F値は1.8, 最外画角はおよそ0.6のビネッティングがあります(全径の40%のみ通過). 最外画角のスポット分布はよく鳥が翼を広げて飛んでいるようとも言われる特徴的な点像分布となっています. 俗にいうサジタルコマフレアと呼ばれるものですが, コマというだけあって3次コマ収差(W131)や5次コマ収差(W151)が発生しているのかと思われますが, 見開き角がかなり大きく, 単純な話ではなさそうです.


今回5次収差も考慮して解析していこうと思いますが, 前回の記事で扱ったBuchdahl-Rimmer係数(BR係数)というものを利用していこうと思います. 以下改めて式を示します.
またZemaxにはFIFTHORD.zosというこの係数を表示するマクロがあります*1.先ほどの設計に対しこのマクロを使って出力したBR係数は以下の通りです.

これらの値と瞳の径成分と円周成分
を先ほどの式に代入していけばスポットダイアグラムが得られます. 早速BR係数の式に実際にこれら値を代入し, 散布図にしたところ以下のパターンが得られました. なんだかいまいちな気もしますので, 少し様子を見ながらチューニングしていきたいと思います.

まず3次だけの分布を見てみようと思ったので表のB5以降を0としたところ以下の通りになりました. これでもだいぶ違います.

今回の設計含め通常ある程度広角標準レンズでは解放時はケラレが生じるものです. 先述した通り今回0.6程度ありますので3次収差だけの状態からこれを考慮すると以下の通りになりました*2. なんだか少し近づいた?

非点収差や像面湾曲の類の収差は楕円形状のパターンを生じますので, サジタルコマフレアのような非対称的な特徴には寄与しないだろうと予想できます.
そこでそれらの項を削除すると(BとFのみ使用), 以下の通りにだいぶ近づきました. といきたいところですが, スポットダイアグラムとはそもそも方向が逆です.

これら試行錯誤を踏まえて3次5次の収差係数のリストの内, 非点収差や像面湾曲の項を除外すると(C, Pi, C5, Pi5を0), 以下の通りになりました. 相変わらず方向が逆になっています.

一度考え直すと, コマと名の付く項F, F1, F2, N1, N2, N3の内Fと同じ符号のものは同じ向きになるためサジタルコマフレアとは本質的には関係なさそうです. よってN1, N2, N3の項が恐らく重要なのだろう!, ということでやや大胆に5次の収差だけにします. すると以下の図のように初めてそれらしい結果に初めてなりました.

ここでさらに値の小さな収差をし, M2, N1, N2, N3だけにしても以下の通りサジタルコマフレアの分布の特徴を表しています.

このように主要素としては5次収差特有の斜め球面収差と楕円コマ収差が影響しているだろうと考えられます. またこの状態でビネッティングを0にすると以下の通りとなりますので, 実際の翼のような形自体はケラレも重要なファクターです.

なんだかあまりスマートにできず本当に正しいことをしているのか不安ですが, もっと勉強して使いこなしたいものです.