光学設計とその周辺、そしてたまに全く関係ないやつ

学んだことを書き留めていきたいと思いますが、ありふれたことを書いても人類の進歩に貢献しないので、専門的な事柄をメインにしたいと思います。なお私の専門とは光学設計とか画像処理とかです。

光学-光学設計

硝材の屈折率, アッベ数の標準公差

社会人になったときは屈折率やアッベ数の標準公差はぐらいとよく聞きました. Zemaxの公差解析エディターでもEdmund OpticsのCommercialグレードはこの値です.ただ最近知ったというわけではないけど, 技術が向上したのか現在は以下のページのように少なくとも…

レンズの体積

レンズの体積を求める機会があったので記事にもまとめます.以下のような平凸レンズを考えましょう. 球がかけた状態を球欠(きゅうけつ, spherical segment)と呼ぶらしい*1. 結論を言うと球欠については以下の公式がある. 曲率半径が登場しないことはやや意外…

カメラキャリブレーションの光学系,特に円周ディストーションについて

マシンビジョンのようにカメラを使って距離的な測量をするのはイメージングの重要なアプリケーションの1つです. 精度よく行うためにはカメラ自体のイメージング系がどういった幾何的なパラメーターを持っているかを調べる必要がありますが, その目的のカメラ…

センサ解像度はMTFにどのくらい影響するか

センサの画素ピッチが大きい場合や, 画素自体が大きければレンズとセンサー合わせたトータルのMTF特性は劣化するはずです. 今回はそのセンサのスペックがどれだけMTFを変化させるのかを扱います. 基本的なフーリエ解析の知識は前提とします.以下の図の通り, …

ある日のやり取り

もうGW, 世間では新入社員が研修を終えてぼちぼち業務を始める時期です.昔まだ設計ソフトを使い始めた時以下のダイアグラム図を見て, ベスト像面に設定しているのにデフォーカスしている, と困ったことがありました. ありがちな話ですがこれは口径端の光線を…

分光器光学系の収差論1(1/3) 平面回折格子

これまでいくつかの記事で特に回折格子を用いた分光器の説明をしてきました. といっても波面収差を考慮しない理想的な光学系の話がメインです.今回はより詳細に光学設計者らしく回折格子分光光学系の収差設計について考えていきたいと思います. 分光器に限ら…

分光器の光学設計2 補足トピック

前回の記事ではチェルニタナー光学系の設計方法について扱いました. eikonal.hatenablog.jp 今回は他の細かいトピックを扱ってみます. スループット 前回の記事では触れませんでした, 光学系がもつスループット(集光効率), どれだけ分光器光学系が光を集光で…

5次収差の応用3 球面収差の解析

5次収差の応用として球面収差の解析をします.以下の記事でBuchdahl-Rimmer係数を使って収差係数からスポット分布を得るようなことをしていましたが, 今回はこの係数を使って球面収差の光線追跡の結果と収差係数から得られる結果を比較し, どこまで高次収差係…

5次収差の応用2 ダブルガウスのサジタルコマフレア

前回5次収差の具体的な分布を取り上げました. 今回は応用としてダブルガウスの特徴的な収差を解析したいと思います. eikonal.hatenablog.jp 今回用意したサンプル設計は以下の通りです. 適当に用意しました. レンズ図とスポットダイアグラムは以下の通りにな…

分光器の光学設計1 1次レイアウト

ポリクロメーターの光学的な基本レイアウトをまとめてみます.1次光学設計という観点(つまり幾何収差は考慮しない)で分光器光学系の基本的な設計方法,特にチェルニタナータイプの設計例をまとめてみようと思います. 基本 改めて回折格子の式のおさらいをしま…

職業としての光学設計者

キャリアとして, 職業として光学設計者ってどんな感じ?について自分なりの考えをまとめました.むしろまとまった文章というよりは百問百答のようなものに近いかも. 割と適当に書きましたのでその点ご注意ください. バックグラウンド 周りを見渡すと大学時代…

波動光学の観点から回折格子を考える

前回の以下の記事で何本か分光器に関して記事を書くと宣言しつつ結局半年近く更新できませんでした... 新年にもなったので気を取り直して取り込もうと思います. eikonal.hatenablog.jpさてその前回の記事でも取り上げましたが, 回折格子の幾何光学的な扱いか…

今話題のChatGPTは光学設計ができるか?

ChatGPTというのが最近はやっているようです. 要はAIのチャットでこちらの質問に対して答えてくれるWebサービスです. 以下の記事で解説がありますが, すごいと感じたのは簡単なプログラミングのコードも実装してくれるらしいのです. チャットできるAI、ChatG…

5次収差の応用1 fθレンズの設計

5次収差の応用として俗にいうレンズの設計を考えてみたいと思います. 正射影である光学系から歪曲収差をあえて発生するような設計をしてレンズを設計しますが,この時具体的にどういった3次と5次の歪曲収差をバランスよく与えればよいかを考えます まずとの変…

光学設計の役に立つリンク集

前回光学設計に関する参考書を紹介しました. 今回はインターネットの情報源を紹介します. https://blog.hatena.ne.jp/Eikonal/eikonal.hatenablog.jp/edit?entry=4207112889940984521eikonal.hatenablog.jp 家電量販店やメーカー直営サロンが開催しているカ…

光学設計の参考書

突然ですが光学設計に関する本を自分なりに紹介します.しかし本といっても最初に買ったときの評価が後になって変わるってことよくあります. つまり買った当初はそこまで読まなくても後になりいろいろ学ぶにつれその本の真価というのをようやく理解するという…

単群繰り出し・部分フォーカシング2 (後群繰り出し インナーフォーカス)

前回に引き続き今回は後群繰り出しでフォーカシングする場合を扱います. 後群繰り出しという言葉はあまりなじみがないと思いますが, 要はインナーフォーカスです.eikonal.hatenablog.jp前回の記事で扱ったように以下の正-正の組みあわせの光学系で後ろのレン…

単群繰り出し・部分フォーカシング1 (前群繰り出し)

昨今の一眼カメラ用レンズは単焦点レンズでも全体繰り出しでフォーカシングしている光学系はあまりないのではないでしょうか. その代わり俗にいうインナーフォーカスやフローティングが使われています. これらの解説をしている文書が意外となかったので今回…

分光器の光学設計のあれこれ

これから何回か分光器の光学設計, 特に回折格子を用いた光学設計について記事にしていく予定です. まずこの第1回目ではイントロとして, 光学設計というより分光器の概論を自分なりにまとめてみます. といっても一般論については世の中情報が十分にあるため,…

スルーフォーカスMTFの見方

MTFは光学設計において最も重要な指標ということはわざわざいう必要はありませんが, そのMTF図は3つの表し方があります. 1つがよくカメラレンズのカタログにあるような像高別にある空間周波数でMTFを示した図です. この図から画角vsMTFが一度にわかります. S…

5次の収差2 (2/2)

前回の以下の記事で5次の収差を導出したが導出するだけして特に説明もしなかったのでその内容を本記事で取り上げよう. eikonal.hatenablog.jp 3次収差 5次収差 Buchdahl-Rimmer 係数 参考文献 3次収差 今回も復習をかねて先に3次収差から説明をします. それ…

薄肉密着2枚レンズの設計 (Hartingの式)

Harting(ハルチング)の式というのがありまして, これは薄肉近似のもと2枚の単レンズが密着しているとき(接合ではなくあくまで分離)に3次の範囲の球面収差とコマ収差, そして軸上色収差が理論的に0となる解の計算式があります. これを利用することで実際の有…

5次の収差1 (1/2)

ある日ふと5次の収差をネットで調べようと思ったら意外と日本語での情報が少なかったので、せっかくならということで今回記事として取り上げようと思いました 波面収差展開 3次収差 5次収差 波面収差展開 最初に波面収差について簡単にまとめたいと思います.…